『魔法使いの嫁』人外×少女の織り成す物語に、心惹かれる。
またひとつ、素晴らしい作品に出会えた。日常生活でゴリゴリ削られる気力を回復できたような気がするよ。
その作品とは、『魔法使いの嫁』。マンガ大賞2015にもノミネートされ、今年にはアニメ化プロジェクトが始動した作品。知る人ぞ知るというイメージだったんだけど、結構有名なのかも。
身寄りのない15歳の少女チセは、500万ポンドで人外の魔法使いエリアスに買われる。彼はチセを弟子にするつもりだという。ほうほう。
「僕は君を僕のお嫁さんにするつもりでもあるんだ」
ふぁっ!?1話は衝撃的なエリアスのセリフで終わるわけですが、続きが気になって仕方ないでしょ!これだけ聞いたら変態ちっくだけど、そんなことないからね!
初めてで勝手が分からないからといって、彼女をお風呂にいれてあげたりもするけど、彼は紳士なだけなんだ!思いやりを持った紳士なんだよ!
辛い過去の経験から、投げやりになりがちなチセ。彼女がエリアスとの交流を通して、少しずつ柔らかくなっていく。彼といたい。彼のことをもっと知りたい。帰る場所を作ってくれたエリアスに対して深まっていくチセの愛情。
帰る場所ができたチセの笑顔がたまらない。守りたい、この笑顔。
エリアスもエリアスで、チセと触れ合うなかで生まれた感情にうまく名前をつけられずにいたりして。不器用なふたりが織り成す、あたたかで美しい物語に、どうしても惹かれてしまうのだ。
物語を経るにつれて、少しずつ縮まっていくふたりの距離。自分のことを語りたがらないふたりが、お互いに惹かれあっていく。それを「恋」と呼ぶか、「愛」と呼ぶか。
魔法と聞けば、ド派手なバトルを想像する人もいるかもしれないが、今作にはその要素はあまりない。むしろ魔法と、それに関わる人々の切なくも儚い物語が中心。胸を突き刺すような痛みを感じるけれども、奥底にはあたたかさがある。
美しくも厳しい世界の中で育まれる小さな愛の物語。家事妖精シルキーや番犬ルツなど、魅力的なキャラクターもたくさんの『魔法使いの嫁』、オススメです。
- 作者: ヤマザキコレ
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