『掟上今日子の備忘録』シリーズ第1作!今日子さんのために毎日をがんばるまである。
忘却探偵シリーズ第1弾の『掟上今日子の備忘録』を読了。本屋さんで見かけてから、気になってはいたものの、手に取るまではいかず。いつか読みたいなと思っていたら、はや2年の歳月が流れ、シリーズは8作まで膨れ上がってしまうという。
他の作品も執筆しつつですよ!?西尾先生の筆の早さに驚くばかり。9作目が出るまでにはなんとか追いつかねば…と読み進めだした次第です。
シリーズの始まり。「初めまして、今日子さん」
ことあるごとに犯人扱いされる「冤罪体質」の隠館厄介が、また事件に巻き込まれる。頼りにしたのは、1日で記憶を失う特異体質の掟上今日子さん!
読者とは初めましてでも、厄介はこれまで何度も今日子さんのお世話になっているようで。その数々の事件が語られる日がくるのだろうか。
厄介が勤める研究室のバックアップデータの在り処は何処へ。所員へのヒアリングを通して、真実に迫っていく今日子さんだが、犯人の手によって眠らされてしまう。
眠ればすべてを忘れてしまう「忘却探偵」の記憶に手を出すとは、不埒な輩がいたもんだ。彼女の怒りを買った犯人は、あっさりとその正体を見破られてしまう。
今日子さんの聡明さと、「最速の探偵」である所以が知れた第1話でした。白髪で若く、しかも可愛いって印象に残ること間違いなし!ドラマの影響か、完全にガッキーで脳内再生されております。
1億円よりも価値のある100万円?「紹介します、今日子さん」
次なる事件は、厄介の恩人である紺藤文房から相談を持ちかけられたもの。大ヒット漫画家の部屋から、100万円が盗まれた。それを返してほしければ、1億円用意しろとの脅迫。
明らかに釣り合わない金額に、よっぽど大事な情報が含まれていると想像はできるが、何が隠されているのかは見当もつかない。
種が明かされたときには、「そういうことか!」と膝を打たずにはいられなかった。現代ならでは、ですね。
紺藤が海外にいた際に出会ったという、今日子さんにそっくりな人の存在が気にかかる。それは、はたして今日子さん本人なのか、はたして他人の空似か。
プライベートな感じが可愛い「お暇ですか、今日子さん」
次に今日子さんのもとに舞い込んだ依頼は、作家・須永昼兵衛氏の原稿探し。
好きな作家に関わることとあって、前のめりな今日子さんが可愛すぎる!普段と違って軽装なのもまたよし。元気発剌!
厄介とふたり、須永氏の別荘で原稿を探す中で、今日子さんが発した一言が切ない。
「だって私、誰かを好きになっても、すぐ忘れちゃうんですもん」
たとえどれだけ好きになっても、寝てしまえばすべて忘れてしまう。その体質になる前は、恋人のひとりやふたり、もしかしたら将来を誓い合った仲の男性がいたかもしれない。だが、それを思い出すことはもうないのだ。
読者側は、少しセンチな気分になってしまいましたが、原稿探しは難なく進んで行く。在り処は、まさかまさかの品の中。豆知識レベルじゃん!
確かに、答えを知ってからだと、ヒントからのつながりが明確に見えてくる。
けれど、今の世代がどれだけその存在を知っていようか。知っていたとして、答えに辿りつけていただろうか。西尾先生の知識量に感心するばかり。
原稿が発見されただけでは、物語は終わらず。紺藤さんいわく、須永氏の死に不審な点がある、と。
須永氏の死の真相は?「失礼します、今日子さん」
前回の報酬と、再度の依頼をしに今日子さんの探偵事務所を訪れる厄介。
なんと、事務所は三階建てビルを一棟丸ごと貸し切り、入るのに1時間もかかるというセキュリティの徹底ぶり。今日子さんの特性を思えば納得だが、どれだけの維持費が…。そこは探偵業でしっかり稼いでると見た。
遺稿の中に、自殺の兆候がないか調べるために、今日子さんは今での著作の100冊すべてをぶっ通しで読み続けると。既読の作品もあるといえど、どれだけの時間がかかるのか想像もつかない。何徹するつもりなんだ…。
困難に立ち向かう今日子さんから、厄介に依頼されたのは、眠りそうな彼女を起こし続けること。
今日子さんが本を読んでいるのを眺めていられるうえに、お金までもらえる…だと…?おい厄介、そこ代われ!!!
喜んでいたのもつかの間。寝たい人間を起こし続けるのは、並大抵の覚悟でできることではないと痛感する。自分の立場で考えれば、眠ろうとしてるときに起こされること以上に腹の立つことってあんまりないですよね。
最初は雑談に興じていた今日子さんも、次第に機嫌が悪くなっていく。たとえ好きな人とはいえ、嫌な面を見るのは誰だって嫌だものな。
限界が近くなり、今日子さんがシャワーを浴びに行ってから3時間が経過。眠りこけていた厄介が見つけたのは、冷水を浴びて青ざめる今日子さん。まずい、まずいですよこれは!
厄介の心遣いの結果は。「さようなら、今日子さん」
倒れた今日子さんのためを思って、厄介は彼女の体に書かれた文字を消していく。無茶をするくらいなら、最初からなかったことにするほうがいいと。おいおい、そんなことしたら…。彼女を思ってとはいえなあ…。
ただ、その行動がのちに真相に辿りつく鍵になる。明かされた真相は、とてもとても美しいもので。須永氏の一途な想いに、胸を打たれずにはいられない。
今回の謎以上に気になるのが、今日子さんの寝室の天井に書かれた文字。なにが掟上今日子を探偵たらしめるのか。その答えがそこにはある。探偵である理由がないといっていたのにもつながる。
そして、迎えたラストの衝撃よ。いやいや、まさか。想像するしかないのだけれど。厄介と今日子さん、一線越えました?越えちゃいましたか? いたずらな今日子さんにドキッとせずにはいられない。
彼女は、がんばる男子の姿が好物と言った。その言葉を聞いて、毎日の生活を頑張らずにいられようか!明日もいちにちがんばるぞい!