【四月は君の嘘】第16話 感想「あたしと心中しない?」
四月は君の嘘 第16話「似たもの同士」感想。結末を知ってから書いているので、ネタバレ注意。愛しく、切ないデート回。
君を代役に任命します
学校からの帰り道。目の前に現れた女の子は、本当ならそこにいるはずのない人で。公生を待ち伏せしていたかをりは、いつの日か聞いた言葉を繰り返す。
「君を代役に任命します」
「君でいいや」じゃなくて「君がいいや」の間違いですよね。春のリフレイン。
かをりに連れて行かれたモールで、さあ、デートの始まりじゃ〜!季節は移ろったけど、かをりに振り回される公生は相変わらず。レターセットやぬいぐるみを買って、ご満悦なようす。物語を包んでいた嫌な雰囲気はどこへやら。
迷子になった女の子をお母さんのもとまで連れて行ってあげるかをりの優しさよ。その子を見て呟いたセリフが意味深。
「お父さんやお母さんを泣かせちゃダメだよ」
「きっと離したら一人取り残されそうで 怖かったんだね」
結末を知ってからだと、このとき自分を迷子に重ねているのだろうと思った。自分の病気でお父さん、お母さんを泣かせてしまったこと。永くはないと知っている自分の命のこと。ふとした一言、ワンシーンでさえも、振り返ってみると今後の伏線なんだと気づかされる。
ふたりは忘れたカバンを取りに、夜の学校へ。
君は忘れるの?
学校に着くも、かをりのカバンは見当たらない。それもそのはず。かをりは、学校には行かず、今日1日だけ外出を許してもらったという。
「君は忘れるの?学校を探検した女の子を 一緒に迷子を助けた女の子を 病院を抜け出して待ってた女の子を」
「忘れない 死んでも忘れない」
「やっぱり君でよかった」
「君は忘れるの?」という問いに、以前にかをりが言った言葉で返すとは、公生は粋な男。ふたりが会心の演奏を見せた後の言葉ですよね。
「君でいいや」からの「君でよかった」って言われて、この時点で公生はかをりの気持ちに気づいてもよさそうな気も……。「渡が好き」というフィルターが邪魔をする。
自転車で二人乗りで帰るふたり。夜空には流れ星。なんてロマンティック!
「無駄な一日なんかじゃないよ このまま時間が止まっちゃえって思うくらい素敵な一日だった」
「お買い物して 夜の学校を探検して 男の子に送ってもらう帰り道は こんなに星がキラキラしてるんだね」かをりのセリフは遠回しな告白じゃないですかー。
公生の制服をぎゅっと握りしめて、涙を流してしまうかをりの涙が切ない。病気がなければ、何度だって幸せな時間を繰り返せていたはずなのに。
「僕は その涙のわけを聞けなかった」聞けるわけないよなあ……。
芋に懐柔される凪が可愛い
公生の忌憚ない指摘に、ついに爆発して家を飛び出してしまう凪。彼女を追いかける公生は、焼き芋で凪を慰めようとする。あっさり懐柔される凪が可愛い。
神社の階段に座り、凪はポツポツと自分の思いを語り始める。凪がピアノが始めたきっかけは、彼女のヒーローであるお兄ちゃん武士。武士はいま、迷路にいる。凪は、自分のピアノで「気づいてほしい」「振り向いてほしい」と願う。
グリコをしながら交わす言葉が微笑ましい。好きな人はいない、だってその人は友達を好きなんだからと言う公生に向けた凪の名言はこちら。
「愛より友情ですか 陳腐です」陳腐です。
「とても眩しくて とても強い人なんだ」という公生のセリフと、かをりが弓を持とうとして、落としてしまうシーンとの落差が悲しい。公生のイメージとは裏腹に、かをりの病状は刻々と進んでいく。
「あたしと心中しない?」
かをりのお見舞いに訪れた公生ご一行。和やかに話していたのもつかの間、かをりは突然ヒステリックになり、公生と言い合いになってしまう。自分に時間がないのを悟っているから、悠長に凪に教えてる暇なんかないと公生を責めてしまうかをりの気持ちもわかる。どうしても、公生の母親を思い出しちゃうなあ。
かをりを心配して、夜にひとりでかをりの病室を訪れる公生。
「"あなたってほんとに変な人"」
「病院にお見舞いにきたのに ずうっと黙り込んでいるんですもの"」
「あたしと心中しない?」
公生が「いちご同盟」を読んでいるのを知っていて、作品に登場するセリフを引用し、淡々と話すかをり。「心中しない?」なんて物騒なセリフ、実際言われたら固まってしまうでしょうよ。
君嘘はいちご同盟のオマージュと言われている作品。読むと、この話以後の公生の葛藤や、セリフをより理解できるはず。いちご同盟を読まずして、四月は君の嘘を完全に理解できっこない。
"似たもの同士"
公生と凪は、あがいても報われない相手を追いかけて 見つめて 恋い焦がれているところが似ている(凪目線で)。かをりと公生の母もまた、病床に臥せり、感情の揺れ動きが激しいところがよく似ている。
ふたつの物事を表す、秀逸なタイトル。新川先生の手腕には、驚かされるばかりだ。
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