とあるカワウソのつぶやき。

四月は君の嘘が大好きなカワウソ。好きな漫画やアニメについて語るブログです。

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『この世界の片隅に』感想。笑いが起こる戦争映画なんて初めてだ。

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『この世界の片隅に』を観てきました。小さな劇場ながら、立ち見も含めて満員の回の連続。この作品への期待値の高さがうかがえます。若者から、普段はアニメを観なさそうなご年配の方まで、幅広い年齢の方々がいたのが印象的でした。

終わった後は、ただただ「良かった…」と噛み締めるように思ったのです。もう良かった以外の言葉は、蛇足だと感じたくらい。

『君の名は。』『聲の形』に続いて、またアニメ映画界に名作が生まれてしまったか。1作でもとんでもないのに、2016年は当たり年すぎるでしょ…!

舞台は、昭和19年〜20年の広島・呉。西暦に直すと、1944年〜1945年。日本人なら言わずもがな、誰もが知る出来事が起こった年。

「戦争」の悲惨さを描いた作品が多いなか、笑いまで巻き起こる戦争映画を、僕はまだ知らない。いや、知らなかったと言うべきか。

描かれるのは、戦時下の日常

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主人公のすずさんは、18歳のときに突然持ち上がった縁談で、周作のもとへ嫁ぐことに。右も左も分からないまま、知らない土地で過ごしていく日々。

ご近所さんと親交を深めたり、折り合いの悪い義理の姉と少しずつ打ち解けたり、限られた食材を使って、工夫して食卓を盛り上げたり。淡々と、日常が描かれていく。

すずさんの朗らかで、ちょっと抜けたようなところが愛おしい。彼女のチャーミングなしぐさに、何度笑わせてもらったことだろう。最初はなんにも知らなかった周作と心を通わせていく過程も微笑ましいのです。

キャスト陣の名演がたまらない

能年玲奈こと、のんの演技が素晴らしくって。まさにすずさんそのもの。彼女をキャスティングした名采配に、惜しみない拍手を送りたい。朗らかで、ちょっと抜けたところのあるすずさんを演じられるのは、彼女しかいない。

すずさんの夫・周作を演じる細谷佳正さんの演技も心にグッときた。すずを想っているのが分かるんですよね。

物語のなかでいちばん心に残っているのは、「広島に帰る」と語るすずさんと言い合うシーン。事情を知っているとはいえ、納得しきれない気持ちが、声色からも伝わってくる。

細谷さんはもともと好きだった声優さんですが、この作品でより好きになってしまいました。いつかお会いしたいものです。

毎日のくらしは、続いていく

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戦時下の日常だけでなく、戦争の辛く、厳しい現実も描かれる。すずさんも、大事なものを失ってしまう。悲しくても、大切なものを失っても、それでも生きていく。毎日のくらしは、続いていく。悲しくても、辛くても、また前を向いて生きていくしかない。


本編も素晴らしいし、エンドロールもまた良い。とある劇場では、舞台挨拶のない通常の回にも関わらず、拍手が巻き起こったのだそう。それだけ人の心を打つ作品なのは間違いない。

「100年先も伝えたい、珠玉のアニメーション」のコピーは、まさにその通りで。後世までずっとずっと残っていてほしい作品だと思う。

制作費難を、3374人もの人たちがクラウドファンディングで支援したのも頷ける。当時この作品を知っていれば、絶対に支援したのになあ。

原作では、映画で削られてしまったところもあるとのこと。そちらもチェックしつつ、また映画を観に行こうかなと思います。たくさんの人に見てほしい、珠玉の名作です。

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