『掟上今日子の推薦文』今日子さんが推薦したもの、なーんだ?
忘却探偵シリーズ第2作の『掟上今日子の推薦文』を読了。まさか、前作で語り部を務めた厄介がリストラされるとは。てっきりホームズとワトソンの関係みたく、彼が今日子さんの助手的ポジションに落ち着くものかと。
備忘録のラストの続きをちらっと伺い知れるかと思っていたのになあ。まあ、それは今後のシリーズに期待しましょうか。
絵画の価値は。「鑑定する今日子さん」
厄介に代わり、今作の語り部を務めるのは、親切守。親切に、守る。苗字や名前からして、何かを守るために生まれてきたような気がしてならない。
その名前だったからこそ、警備のお仕事をしていたからこそ、今日子さんと関わりを持つようになるんですよね。
舞台は美術館。今エピソードのキモは、絵画の価値。どうして今日子さんは、一度は「2億」と語った絵画の価値を「200万」と下げたのか。
前作に比べると、トリックは分かりやすかったかなと。絵自体に変化がないのなら、変わったものはひとつしかないもの。
ただ、すんなり解けたのは、なぜか既読感があったからかもしれないのが本音といったところで…。ドラマで見たのか、美術館を舞台にした他の小説で読んだのか。はっきりしないのがもどかしい。
犯人はこの中に。「推定する今日子さん」
「犯人はこの中にいます」
推理小説ではお決まりのセリフで幕開け。ミステリー好きではなくとも、一度は目にすることのあるセリフだろう。ただ、少し違うのは「この中」が部屋や少数の人を指すのではなく、32階立ての高層ビルを表していること。
「アトリエ荘」と呼ばれる高層マンションで起こった事件の真相は。額縁匠の和久井さんの安否は。
最速の探偵であるところの今日子さんのハイスペックっぷりを、改めて感じたしだいです。小さな体から溢れる行動力。
抜け目のない救急対応をしたり、即興でタンカを作ったり、変装のために服を縫ったり。DIY面に関しては、TOKIOに勝るとも劣らずの実力なんじゃないか。
結局、何を推薦したのか?「推薦する今日子さん」
今回のオチ、というか解決編。始まりから散りばめられていた伏線がつながる気持ち良さ。なるほど、舞台設定も、職業設定も、このためだったんだなと。伝説の額縁匠の最後の仕事。そのスケールの大きさに、ため息がこぼれる。
何を推薦したんだ…?と疑問に思っていたら、付記でその謎が解ける。過去の今日子さんから、未来の今日子さんへの推薦文。今日子さんの警備主任として、親切を推薦する、と。
ほうほう、そうきたか。もしかしたら、親切さんと厄介の絡みも、今後の作品で見られるのではないでしょうか!事務所の警備についた親切さんに嫉妬する厄介、あると思います。読者である僕も嫉妬を隠せないのに、想いを寄せている厄介からしたらとんでもないことですよ。
ふたりの再登場に期待しつつ、次作を読み進めることにします。
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