【四月は君の嘘】第22話 感想「僕らは誰かと出会った瞬間から 一人ではいられないんだ」
四月は君の嘘 第22話(最終回)「春風」感想。最終回はいつ見ても泣ける。
僕らは誰かと出会った瞬間から 一人ではいられないんだ
みんな見てる。人生を豊かにしてくれた人達に応えなきゃという気持ちで、ピアノを弾き続ける公生。
渡、椿、紘子さん、凪、武士、絵見、たくさんの人達と生み出した音があると気付く。TV放映版だとバックが水色だったのが、円盤ではオレンジっぽくなってるんですよね。温かみのある暖色にしたのかな。
「僕らは誰かと出会った瞬間から 一人ではいられないんだ」
音楽を通して、かけがえのない人達と出会ってきた公生。音楽があったから出会えた人がいる。出会えた音がある。出会えた瞬間がある。
「僕の中に」
「私の中に」
「君がいる」
離れていても、かをりと公生の心は通じあっている。「君がいる」のときにふたりの手が合わさってるのが心にグッとくる。
届け、届け、届け、とかをりへの想いを演奏に込める公生。いつの間にか舞台がウユニ塩湖のような青の世界へ。そこに現れたのは白いドレス姿の宮園かをり。
彼女を見た瞬間、何もかもを察した公生の顔が切ない。見たかったふたりの演奏が、ふたりだけの世界で実現する。作画がほんとにすごい。ぬるぬる動く。最終回の気合の入りっぷりが伝わってくる。
演奏が終盤に近づくと、世界の彩度が下がっていく。「行かないでくれ」と公生は願うけれど、かをりは桜の花びらとなって消えていく。
原作と違って、かをりの胸から光が飛び出す派手な演出に、放映当時はびっくりしたものです。なんか思ってたのと違うなーと感じていたのですが、監督が「超新星爆発を意識した」と言っていたのを聞いて納得。
「星は君の頭上に輝くよ」だったり、君嘘では「星」という単語は大事な言葉。公生にとっての星である宮園かをりが「死」の瞬間に見せた最後の輝き。かをりと星を結びつけた見事な表現だったと思います。
「さよなら」
公生は、涙をボロボロ流し、かをりとの別れを告げる。切ない、切なすぎるよ……。
拝啓 有馬公生様
公生はかをりの父母から、彼女が公生に遺した手紙をもらう。お父さんの「ありがとう かをりの人生を豊かにしてくれて」のひとことでさえ泣けてくる。
公生は手紙貰ってもすぐには開けられてないんですよね。貰ったのは冬だけど、手紙を開けたのは春。かをりと出会った春。そりゃ心の整理がすぐつくはずもないですよね……。
秘められたかをりの想いが明かされる手紙の内容に、涙せずにはいられない。
『拝啓 有馬公生様』
『さっきまで一緒にいた人に手紙を書くのは 変な感じです』
『君はひどい奴です グズ ノロマ アンポンタン』
『君を初めて見たのは5つの時 当時通ってたピアノ教室の発表会でした』
『ぎこちなく登場したそのコは イスにおしりをぶつけ 笑いを誘い』
『大きすぎるピアノに向かい 一音を奏でた途端』
『私の憧れになりました』
かをりも公生に魅せられたひとりだったんだ。すべての物語は、公生の演奏から始まってるんだなあ。
『音は24色パレットのようにカラフルで メロディは踊り出す』
『隣のコが泣き出したのは ビックリしました』
絵見の隣に座ってたのがかをりだったのね。見返してみると、ちゃんとかをりがいるのがわかる。細かいっ!初見ならかをりだって言われないと気づけないよ。
『それなのに 君はピアノをやめるんだもの』
『人の人生を左右しといて ひどい奴です』
「コーセー君にピアノ弾いてほしいの!!」の親にヴァイオリンをせがむちびかをりが可愛すぎて。簡単にヴァイオリンを買ってもらえるはずものもなく、夢のために努力する姿をCoda.⑤で読んでいたので、余計に胸がいっぱいになる。
かをりの夢は、公生と一緒に演奏すること。その夢は、第4話の時点で叶っている。演奏終了後に「ありがとう」と伝えたかをりの涙の意味が、最終回でやっと分かるというね。あの「ありがとう」には、「夢を叶えてくれて」という文脈も込められていたんですね。
『最低 のろま アンポンタン』
『同じ中学だと知った時は舞い上がりました』
『どうやれば声かけられるかな 購買部にサンドイッチ買いに通おうかな』
かをりの黒縁メガネは公生を意識してのものだったのかなと思ったり。
『でも結局 眺めてるだけでした だってみんな仲良すぎるんだもの』
『私の入るスペースはないんだもの‥‥』
切ない……切ないよ……。公生、椿、渡の幼馴染トリオの積み上げた時間の長さゆえに、ですね。
『子供の頃に手術をして 定期的に通院して』
『中一の時に倒れたのをきっかけに 入退院の繰り返し』
『病院で過ごす時間が長くなりました ほとんど学校に行けなかったな』
『ある夜 病院の待合室で お父さんとお母さんが泣いているのを見て 私は長くないのだと知りました』
16話で迷子を案内しているとき、「お父さんやお母さんを泣かせちゃダメだよ」とつぶやいていたかをりを思い出す。自分は親を泣かせてしまっていたから。
『その時です』
『私は 走りだしたのです』
公生と出会ったカラフルな宮園かをりが生まれた瞬間。
『後悔を天国に持ち込まないため 好き勝手やったりしました』
『怖かったコンタクトレンズ 体重を気にしてできなかったケーキホール喰い』
『偉そうに指図する譜面も私らしく弾いてあげた』
ケーキホール喰いはすげえ。後悔を天国に持ち込まないため、やりたいことをどんどんやっていったんだなあ。
『そして 一つだけ 嘘をつきました』
『宮園かをりが渡亮太君を好きという嘘をつきました』
『その嘘は私の前に 有馬公生君 君を連れてきてくれました』
「四月は君の嘘」のタイトルの意味が、最終回にしてようやく判明。1話でかをりが涙を流していたのは、憧れていた、恋い焦がれていた公生が、自分の眼の前に現れたから。むせたなんて言い訳してたのがいじらしい。
5つのときからずーっと想っていた男の子との待望の出会い。そりゃ涙だって流すよ。
『渡くんに謝っといて』
『まーでも渡君なら すぐ私のことなんか忘れちゃうかな』
『友達としては面白いけど やっぱり私は一途な人がいいな』
どんまい渡。渡とかをりがいつの間に遊びに行ってたの!?とびっくりした人は、小説版を読もう!渡のことをより好きになれるはず。
『あと椿ちゃんにも謝っといてください』
『私は通り過ぎていなくなる人間』
『変な禍根を残したくなかったので 椿ちゃんにはお願いできませんでした』
『というか「有馬君を紹介して」なんてストレートに頼んでも 椿ちゃんはいい返事をくれなかったと思うな』
『だって椿ちゃんは君のこと大好きだったから』
『みんなとっくに知ってるんだから 知らなかったのは君と 椿ちゃんだけ』
椿の想いにしっかり気付いていたかをり。公生のことを心配する椿が、健気で健気で仕方ない。椿をなだめる柏木さんがめっちゃいい。
「頭に訊かないで 心に訊くもんよ」なんてセリフ、どんな人生を生きてきたら出てくるんだ。まあ、その人生経験はBLからきてるんですけど……。蔵書108冊はヤバイ。
『私の姑息な嘘が連れてきた君は 想像と違ってました』
『思ってたより暗くて ひくつで 意固地で しつこくて 盗撮魔』
『思ってたより声が低くて 思ってたより男らしい』
『思ってた通り 優しい人でした』
もー公生のことめっちゃ見てるもんね、かをちゃん。かをちゃんの愛がこれまでかってくらい溢れてる。一言一言に反応する公生が可愛らしい。
『度胸橋から飛び込んだ川は冷たくて気持ちよかったね』
『音楽室をのぞくまんまるの月は おまんじゅうみたいで美味しそうだった』
『競争した電車には 本気で勝てると思った』
『輝く星の下で二人で歌ったキラキラ星 楽しかったね』
『夜の学校って絶対何かあるよね』
『雪って桜の花びらに似てるよね』
『演奏家なのに 舞台の外のことで心がいっぱいなのは なんかおかしいね』
公生とかをりが積み上げた、かけがえのない時間。たわいもない時間だったかもしれないけれど、二人にとっては大切な時間で。
BGMにキラメキが流れ出す。反則!反則!泣かない訳ないじゃないですか、こんなの!
一段と色っぽくなった公生。モテモテですな。公生のピアノになりたい凪が可愛いっ!
かをりと公生の掛け合いで崩壊してた涙腺がまた……。
『忘れられない風景が こんなささいなことなんておかしいよね』
「そんなことないよ」
『君はどうですか?』
『私は誰かの心に住めたかな?』
「そうだね」
『私は君の心に住めたかな』
「土足で上がってきたよ」
『ちょっとでも私のこと思い出してくれるかな』
「忘れたら化けてでてくるくせに」
『リセットなんかイヤだよ』
「するもんか」
『忘れないでね』
「うん」
「約束したからね』
「うん」
このかをりと公生の掛け合いで崩壊してた涙腺がまた……。
『やっぱり君でよかった』
『届くかな 届くといいな』
『有馬公生君 君が好きです 好きです 好きです』
好きです三連発はダメだ、貯めに貯めた涙がボロボロ流れてくる。
『カヌレ全部食べれなくてごめんね』
『たくさん叩いてごめんね』
『わがままばかりでごめんね』
『いっぱいいっぱいごめんね』
『ありがとう』
たくさんの「ごめんね」のあとの「ありがとう」。踏切の奥に消えていくかをり。
「君は自分勝手だ お礼を言うのは僕なのに」
『P.S.私の宝物を同封いたします いらなかったら破って捨ててください』
かをりが消えた方向から、椿がやってくる。てくてくと歩いてきたかと思えば、公生の右足を蹴り上げる。6話で公生が椿の足をちょんとつついたのとまったく逆。
「一人になんてなれると思うなよ 公生」
「背後霊みたくずーっとずーっとそばにいてやるんだからな 覚悟しとけ!!」
かをりを公生に椿が寄り添ってくれるのは救いだ。きっと今後の彼らの人生にはいろんなことがあるんだろうけど、公生のそばには椿がいる。一歩下がったところで公生を支えているイメージ。
「もうすぐ春が来る」
「君と出会った春が来る」
「君のいない春が来る」
公生のモノローグとともに、電車が通り、黒猫が、かをりが姿を消す。小さな頃の公生とかをりが映った「宝物」の写真で物語はFin.
EDのオレンジがまた泣けるんですよね。かをりのいろんな表情が次々と映し出されて。このかをりは公生から見たかをりなんだと監督がおっしゃっいたのを聞いて、また一段と感動が増しました。
アニメで見たかった原作のシーン
アニメの最終回は、原作とストーリーは同じですが、演出が異なる点が多々。時間の制約もあり、カットされたところから、ここは見たかったなというところを紹介。
・武士の「これは告白だ」
公生の演奏を聞いて、「恥ずかしい奴だな これは告白だ」と武士がつぶやくシーン。演奏家同士通じ合うもの、分かり合うものがあるのだと感じられた。たったひとことだけど、梶さんの声で聞いてみたかった。
・会場中のスタンディングオベーション
公生の演奏が終わったとたん、会場中が沸き起こる。この表現で、公生がコンクールを優勝したことが確信できました。椿が、凪が、三池君が、紘子さんが涙を流す姿。アニメでも見たかった。
・公生の背中を追い続けるライバルたち
公生の演奏を終えたときの武士と絵見の会話に、ものすごく胸が熱くなる。
「やっぱすげーなあいつ」
「私達は旅をするんだね‥‥」
「あいつの背中を追い続けて」
「これまでも これからも」
「ああ きっと素晴らしい旅になるよ」
武士、絵見、公生の三人がこれまでも、これからも良いライバル関係であることを思わせる。かつて公生が言った「僕らはまだ旅の途上にいる」のアンサーのようで。彼らはずっと、ずっと公生の背中を追い続ける。いつか彼を追い越す日まで。
・演奏後の公生のモノローグ
アニメでは「さよなら」だけだったのが、原作ではもう少しかをりへの想いを述べてるんですよね。
「星が輝いているよ」
「届いたかな この声 君に 届いたかな」
「さよなら」
会場中の拍手を前にピンと立ち、涙を流す公生の姿。アニメで展開を知っていたのに、涙がボロボロと。公生の想いの込もった演奏は、かをりにきっと届いたはず。
原作とアニメどっちが好き?なんて、甲乙つけがたい。どっちも好きだよ!アニメしか見てないよって人はぜひ原作も読んでほしい。原作あってのアニメなのだから。
「四月は君の嘘」という物語
「聴いてくれた人が私を忘れないように その人の心にずっと住めるように」
そのかをりの言葉どおり、公生の心に、僕らの心に彼女の存在は、残り続けている。放映から1年経ったいまでも、聖地巡礼する人や、アニメを見返す人が絶えない。
物語のなかで、公生の前を歩き続けたのはかをりだけ。宮園かをりはオンリーワンなわけです。椿は公生のそばにいて、武士や絵見は、公生の背中を追い続けている。公生が追い続けたかをりだって、公生に突き動かれたうちのひとりなんですけどね。
四月は君の嘘は、有馬公生と宮園かをりが、ふたりで歩んだ軌跡を描いた、奇跡のような物語。
ありがとう、四月は君の嘘。この作品に出会えて僕は幸せです。
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